昨年10月より代表取締役等住所非表示措置が始まっています。
前回の記事:代表取締役の住所の非表示について – 司法書士・行政書士 内野事務所
これまで登記簿に記載されていた代表取締役の住所ですが、プライバシー保護の観点から一部非表示にすることが認められるようになりました。
新しい制度に対する影響が読めないこと、様々なデメリットも考察されてきたことから、現段階では様子見をしている(住所を表示している)会社様の方が多いですが、一部導入された会社様もいらっしゃることから、今回記事にしました。
非表示のデメリット
考察段階では次のようなデメリットが指摘されていました。
- 登記記録上の代表取締役が、実在する同一人物かを確認できないおそれや、与信の面で問題のある同姓同名の別人と間違われるおそれがある。
- 会社が銀行から融資を受ける際に、代表取締役と担保とする不動産の所有者の同一性を確認できない等により、経営者保証や与信額に不利益となるおそれ、新規の銀行口座開設等で手間や書類が増えるおそれがある。
- 司法書士等が代表取締役等の本人確認をすることができず、その結果として登記が困難となる、手続きや書類が増える等の影響が出るおそれがある。
- 会社に何らかのトラブルが発生した際、代表取締役の住所は責任者の所在を明らかにするための情報となるため、住所が表示されていないことで、責任追及や問題解決が妨げられるという見方がされる(社会的信用の低下)おそれがある。
- 法務局に記録されている住所がどこなのか失念するおそれや、登記漏れにつながるおそれがある。
与信については、約2割の会社がマイナス評価とするアンケート結果もありました。
代表者の一部住所の非公開がスタート、選択するか「わからない」が半数 与信上「マイナス評価」が約2割 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ
住所非表示措置を導入した基準
プライバシーの保護を優先する方や、既存の取引先が多く、住所を非表示にしても影響が出ないと見込まれる方が非表示措置を取られました。また、住所非表示措置は役員の重任等登記のタイミングでないと出来ないため、役員任期が2年等の短い方はしばらく様子を見たいという事で次回の改選年まで見送る方が多く、逆に任期が長い方は改選のタイミングで非表示措置を選択されました。
個人的には、これから口座開設や融資等が控えている設立時や、不動産取引等の不特定多数の方との取引が多い事業の会社様には、上記デメリット2~4の理由から現段階ではあまりお勧めしていません。
また、本店をバーチャルオフィスにしている場合は、実在性の確認手続きの点で難しいのではと考えています。
住所非表示措置の取りやめ
前述の通り、住所非表示措置は登記のタイミングでなければ開始はできませんが、一度開始した措置を取りやめることはいつでも可能です。
与信などの当事者では確知が難しい不利益は別にして、いったん住所非表示措置を取ってみて、不都合が生じた際に取りやめる(再度住所を表示させる)という選択肢もあり得るかと思います。