おひとり様の終活も一般的になりましたが、ご自身亡き後の手続きを第三者に依頼する方法には、遺言書や死後事務委任契約があります。
誰に遺産を引き継ぐか、またその手続きを行う人を指定するのが遺言書、葬儀や埋葬の手配を依頼するのが死後事務委任契約です。
死後事務委任契約で主に依頼できること
- ご遺体の引き取り・搬送の手配
- 死亡診断書の受領、死亡届の提出
- 菩提寺・親族・関係者等への連絡
- 葬儀・火葬・納骨・永代供養の手配
- 施設や病院への未払金の支払い、お部屋の明け渡し手続き
- その他
費用
葬儀に要する実費や、受任者(依頼を受け死後事務を行う人)が得る報酬は、預託金として契約の際に受任者に預けておくことが一般的です。
依頼する業務の範囲や、希望する葬儀の規模・戒名等にもよりますが、百万円単位のかなり高額な預託金となることも珍しくありません。
注意点
いくら死後事務委任契約があっても、親族以外では手続きが難しい関係先もあります。
例えば、死亡届は死後事務委任契約では対応してもらえない市町村も存在しますので、事前確認が必要です。
また、死後事務委任契約をした後に、受任者が病気や経営破綻等で、いざという時に連絡がつかない、業務を遂行してもらえない、という可能性もあり得ます。
契約から発動(相続の発生)までの期間が比較的長くなる死後事務委任契約の性質上、予測不可能な事態も起こりうることを想定しておくべきでしょう。
誰に依頼するか・依頼先選定のポイント
長期にわたり高額の預託金を預けることを考えると、依頼先はご自身が日常的に信頼できる関係性を築けている相手が理想です。
そのような相手がいない場合は、次のポイントを参考にしながら、専門家や事業者を選んでみてください。
個人か法人か
個人に依頼する場合、その人が先に亡くなられたり、病気や体力低下等で、死後事務が遂行できなくなる可能性があります。
法人は個人に依頼するよりは上記の可能性は低くなりますが、法人であっても実質は経営者一人だけで個人と変わらなかったり、また経営破綻等で法人そのものがなくなってしまう可能性もあります。
一概にどちらが良いと言えるものではありませんが、どちらかと言えば、社歴があり複数スタッフがいるような法人や、個人に頼む場合でも、自分より20歳程度は年齢差のある若い人を選ぶことで、多少のリスク軽減につながると思います。
受任できる体制が整っているか
依頼者が亡くなるタイミングは誰にも予測がつきません。
土日祝日の対応や、スタッフ体制など、急な対応が可能なのか、希望内容を実現してもらえる体制がある事業者なのか、依頼先の受任体制をはよく確認しておきましょう。
預託金の管理が適正か
預託金(事前に預けた死後事務の実費と報酬)は預り金口座に入金する等、受任者自身のお金ときちんと分別して管理してくれるところを選びましょう。
最近は、「信託口座」という預かり口を利用し、受任者の使い込み(横領)を防止し、万が一受任者が破綻しても全額保護されるような仕組みを利用している所もあります。
費用や中途解約の条項を確認しておく
死後事務のサービスを提供している事業者はたくさんありますが、サービスも費用もまちまちです。
即決せず、複数先を候補に入れ、費用感やそれぞれのサービスの特徴を知っておくことが有用です。
長期にわたる契約となるため、中途解約の要件や解約金等についても、事前に確認をとっておくと良いでしょう。
最後に
死後事務委任契約は、依頼者にとっても受任者にとっても、信頼と覚悟のいる契約です。
よく検討し、説明を受け、内容を理解して契約を締結してください。
そのためにも、気力・体力がある早いうちから、ご自身の希望を精査し、準備を開始することをお勧めします。